逃げられるものならお好きにどうぞ。
「オマエが俺の女を横から引っ攫ったんだろーが! しかもアイツの……マミの前でオレを蹴り飛ばして、散々コケにしやがって……!」
「……マミ? 誰それ、全く覚えがないんだけど。人違いじゃない?」
「っ、んなムカつく面、オレが見間違えるはずねーだろ!」
鼻ピアスの男の子はふぅふぅと荒い息を吐き出しながら目を血走らせて、怖い表情で黒瀬くんを見据えている。
「ここで会ったのも何かの縁だ。あん時の恨み、今返してやるよ。……オマエも、女の前で大恥かけばいいんだ。おいオマエら、ちょっと手伝え!」
「ははっ、タカシのやつめっちゃキレてんじゃん」
「ま、暇つぶしにはちょうどいいんじゃね?」
鼻ピアスくんの合図で、後ろに控えていた他の男の子たちが、ギャハハと下卑た笑い声を響かせながら近づいてくる。
少しだけ怖くなって黒瀬くんと繋がったままの左手に力をこめれば、同じように握り返された。
だけどその手は直ぐに離れてしまう。