逃げられるものならお好きにどうぞ。
「ふふっ。百合子ちゃん、おはよう」
「な、何で美代さんが此処に……?」
白のブラウスに、黒のプリーツスカート。大きなカラーサングラスを掛けて、これからバカンスに行くような格好をした美代さんが、にこやかな笑顔で立っている。
……えっ、本当に、どうして美代さんが此処に居るの? 私、今日会う約束とかしてなかったよね?
困惑したままの私を置いてけぼりに、美代さんは「ほら、百合子ちゃん早く荷物持って! 行くわよ!」と急かしてくる。
言われるままに荷物を手にして部屋を出れば、アパート前に、大きな黒いワンボックスカーが一台停まっているのが見える。
「っ、百合子さん!」
ワンボックスカーの真横に立っている見慣れた男の子は、車内にいる相手と何やら言い争っていたみたいだけれど、私と目が合うと――パッと瞳を輝かせて駆け寄ってくる。