逃げられるものならお好きにどうぞ。


「ほら、百合子ちゃん。席は椿の隣にしてあげるから、早く乗りましょっ」



ウキウキ顔の美代さんに手を引かれて車の近くまで足を進めれば、後部座席のドアが開かれた。



「よぅ。……すまねぇな、嬢ちゃん」



そこに乗っていたのは、申し訳なさそうな顔で眉を下げた皇さんだった。



「皇さんも、この人たちのことちゃんと見ておいてよ」

「あぁ、ワリィな。まさかオマエたちも一緒だとは思ってなかったんだよ」



唇を尖らせた黒瀬くんの不満気な声に、皇さんは律儀に謝っている。

だけど今の話を聞いた限りだと、どうやら皇さんは、この件に一枚噛んでいたわけではないようだ。何も知らずに萌黄さんと美代さんに連れ出されたらしい。



「ちょっと椿、慎二さんに文句言ってんじゃないわよ」



美代さんが黒瀬くんの後頭部をバシリと叩いたことで、二人の間に再び険悪な雰囲気が流れ始める。

< 256 / 504 >

この作品をシェア

pagetop