逃げられるものならお好きにどうぞ。
「美代さん。そのボストンバッグ、持ちましょうか?」
「大丈夫よ。百合子ちゃんは女の子なんだから、重いものは男に持たせておけばいいのよ」
「でも、キャリーケースもあって大変じゃないですか?」
「……それじゃあ、これだけお願いね」
こちらに歩いてきた美代さんに声を掛ければ、美代さんは肩に掛けていた軽いショルダーバッグを手渡してくる。
「……皇さんと、何か進展があるといいですね」
「なっ……私を揶揄おうだなんて、百合子ちゃんってばいい度胸してるじゃない」
バッグを受け取る際、考えていたことを小声で伝えてみれば、顔を赤く染めた美代さんに睨まれてしまった。
だけど……正直ちっとも怖くない。むしろ、照れている表情が可愛いと思ってしまう。
思わず笑みを漏らしてしまえば、ムッとした顔で眉を寄せた美代さんに「生意気」と片頬を摘ままれてしまった。
でも軽く引っ張られているだけだから、全然痛くはない。ただの照れ隠しだってすぐに分かった。
――やっぱり美代さんは、ちょっぴり素直じゃないところもあるけど、すごく優しくて可愛らしい人だ。