逃げられるものならお好きにどうぞ。


「ちょっと椿、私の荷物は?」

「美代さんは皇さんに頼めばいいんじゃない?」

「ん? 何だ、これを持っていけばいいのか?」

「し、慎二さん!? いえ、私の荷物、重いと思うので……! 大丈夫です!」



私の倍はありそうな大きなキャリーケースに加えて、ボストンバッグまで持ってきていた美代さんは、旅館までの荷物持ちを黒瀬くんに頼むつもりだったようだ。

けれど黒瀬くんの声が聞こえたらしい皇さんが持とうとすれば、美代さんは慌てた様子で自分の荷物を持って運び始める。


美代さんが頼めば、皇さんなら快く運んでくれそうだけど……美代さん的には、意中の相手には素直に甘えづらいのかもしれないな。

美代さんが皇さんのことをどれだけ思っているのか知っている身としては、今回の旅行で二人の間に何かしらの進展があればいいのにな、と密かに願ってしまう。

< 260 / 512 >

この作品をシェア

pagetop