逃げられるものならお好きにどうぞ。
「その台詞、椿が聞いたら泣いて喜びそうだな」
皇さんは茶化すような口調で言いながらも、足を止めて、私に向き合う。
何か大切なことを言おうとしている――そんな雰囲気を感じる。
「椿は良い奴だ。だが……一緒にいることで、今後、危ない目に遭うこともあるかもしれねぇ」
その言葉で、以前、黒瀬くんが大勢の男たちに囲まれていた時のことを思いだした。
あの時は、すごく怖かった。
黒瀬くんが大怪我しちゃうかもしれないって、恐怖で足が竦んだ。
出来ることなら、もうあんな怖い思いはしたくないって、そう思う。
だけど黒瀬くんは、“そういう世界”に身を置いている人なんだ。
それなら私は――。