逃げられるものならお好きにどうぞ。
「皇組とは、今まで角が立たないような付き合いをしていたんだけど……正直、ウチの商売の邪魔なんだよね。違法売買なんてどこの組の連中もやってるっていうのに、一々口出ししてきやがって……本当に、迷惑してるんだよ」
聞いてもいないのに、男性は組の内部事情であろうことを、ペラペラと口にする。
「神社で一緒にいた男が、噂の忠犬なんだろう? ということは君は、あの男の良い人っていうわけだ」
「……そうだとしたら、何なんですか」
もうバレているのなら、白を切っても仕方ないだろう。
黒瀬くんとの仲を認めれば、男性はにんまりと口許に弧を描く。
「君の選択肢は二つだ。君自ら彼の情報を吐くか、君に人質になってもらって彼を脅すか。さて、どちらがいいかな?」
「……最低な選択肢しかないんですね」
「そうかな? これでも、かなり譲歩した方だと思うんだけど」
「第三の選択肢です。私が話せることは、何もありません」
「……あぁ、そうだ。選択肢はもう一つあるんだった」
男性は、自身の背後にチラリと視線を向けた。
それを合図に、後ろで控えていた男たちが動き出す。