逃げられるものならお好きにどうぞ。
「林くんはただの職場の後輩だし……そもそも今回は佐々木ちゃんも一緒なんだから、何かが起きる心配なんてないよ」
「……」
私の返答が、どうやら椿くんはお気に召さないらしい。むすっとした顔で黙り込みながら、何かを訴えるようなまなざしで見下ろされる。
かと思えば、腰元を引き寄せられた。
反対の手で両手首を掴まれ、拘束されてしまう。
「そこまで言うならさ、本気で抵抗してみてよ。俺の拘束から抜け出すことができたら、付いていくのは諦めるからさ」
「……」
掌を握りしめて、グッと力を込めてみるけど、びくともしない。
男と女時点に、そもそも私が、椿くんに力で敵うはずがない。それに、私は……。
「……無理だよ」
「ほらね。だったら…「だって私、本気で抵抗する気がないから。黒瀬くんになら……いかがわしいことだってされてもいいって、思ってるし」
私の言葉に、椿くんの動きがピタリと止まる。
手の力も緩んだので、この隙にと拘束から抜け出して、距離をとろうとした。
だけどそう簡単に逃がしてもらえるはずもなく、すぐに肩を引き寄せられ捕まってしまう。