逃げられるものならお好きにどうぞ。
「……百合子さんさ。それ、意味分かって言ってるんだよね?」
「わ、分かってるよ」
旅行の時には萌黄さんたちが訪ねてきたり、椿くんが怪我をしてしまったりで、あれ以来そういう雰囲気になることはなかった。
でも、この時間帯に家を訪ねてくる人はいないだろうし、椿くんの背中の傷もふさがっている。
「……俺を煽った百合子さんが悪いんだからね?」
「煽ったって……別にそんなつもりは、」
反論の言葉は、最後まで言わせてもらえなかった。
さっきよりもずっと性急なキス。舌の絡まり合う音がダイレクトに鼓膜に響いて、恥ずかしくなる。
思わず舌を引っ込めそうになったけど、椿くんはそれを許してはくれない。
執着に追いかけてきて、まるで全部食べられちゃうみたいな、貪るような口づけに、何も考えられなくなる。