逃げられるものならお好きにどうぞ。
「そっか、頑張ってね」
「うん。……ねぇ、お姉さんさ、来週の十一月三日って空いてたりする?」
「三日? 普通に仕事だけど……まあ夜なら空いてるよ。何で?」
「その日、あのバーにきてくれないかな?」
「……何で?」
「ふふっ、何での連発だね。んー、まあ理由は……俺の誕生日だから? お姉さんにお祝いしてほしいなって」
今日から約一週間後が、黒瀬くんの誕生日らしい。それはとてもおめでたいことだと思う。だけど……。
「黒瀬くん、女の子にモテモテみたいだし……祝ってくれる子なんてたくさんいるんじゃないの?」
純粋に疑問に思って口から出てきた言葉だった。
彼がモテるタイプの人間であることは百も承知だし、ただ数回会っただけの地味でパッとしない女に祝ってもらうより、もっと若くて可愛い、仲の良い女の子が周りにたくさんいるんじゃないかって。
……そもそも黒瀬くん、私のことタイプじゃないとか言ってたしね。
出会った時のこと、まだ少しだけ根に持ってるんだから。