逃げられるものならお好きにどうぞ。


「あー、はいはい。もうお腹いっぱい。ご馳走様でした」



自分から話を振ってきたくせに、三奈はひらひら片手を振りながら、またにやけた顔で私を揶揄ってくる。

私ばかり揶揄われるのも悔しいし、今度は三奈の話を聞こうと思い口を開こうとした、そのタイミングで、窓の外に林くんの姿を見つける。


目が合ったから手を振ろうと思ったけど、先に視線を逸らされてしまった。

林くんはそのままスタスタと歩いていってしまい、後ろ姿は直ぐに見えなくなる。



「今の子、百合子の部署の後輩くんじゃなかった? 何、喧嘩でもしてるの?」

「喧嘩、をしてるわけではないんだけど……最近、避けられてる気がするんだよね」

「えー、百合子、何かやらかしたんじゃないの?」

「やらかし……たのかな? 特に覚えはないんだけど……」



林くんには、あの出張以来、何故かあからさまに避けられている。それに、怯えられている気もするんだよね。

私が何かしてしまったのなら謝りたいんだけど、声を掛けようとしても直ぐにいなくなってしまうから、ろくに話すこともできないし……。でも仕事中の会話が成立しないわけではないし、業務に支障はないから、とりあえずこのまま様子見で大丈夫かな、とも思っているんだけど。

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