逃げられるものならお好きにどうぞ。
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「残念、振られちゃったみたいね」
シャワールームに身を潜めていた憂美が、クスクスと笑いながら姿を現す。
「……憂美さん、覗き見なんて悪趣味じゃない?」
「あら、私が手配してあげてるホテルでおっぱじめようとした椿の方が、よっぽど悪趣味だと思うけど?」
「……ま、それもそうか」
「まぁ私は気にしないけどね?」
憂美は艶やかに笑いながら、自身の腕を椿の首に回した。
情欲をはらんだ瞳に見上げられた椿は、求められるままに、憂美の唇に噛みつくようなキスをする。
「ふっ、んん……」
「っ、……ねぇ、憂美さん」
「なぁに?」
「さっきの人、憂美さんは誰だか知ってる?」
「……さぁ? 私は知らないけど」
「……そう」
「そんなことより、ほら。ベッド、行きましょ」
憂美に手を引かれた椿は、導かれるままにベッドに上がる。上着を脱いで憂美に馬乗りになりながらも、考えてしまうのは、つい先ほど、初めて出会ったはずの女性のことだった。
――俺の名前を呼ぶその声は、今にも泣き出しそうに思えた。遠い星の瞬きのような、寂しげに震える声を、俺はどこかで……。