逃げられるものならお好きにどうぞ。
「いやあ、まさかこんな所で会うなんて。奇遇ですね! もしかして、椿と待ち合わせですか?」
「ううん、一人だよ」
「そうなんですね! いや~、それにしても、お姉さん本当に美人っすね! 椿がぞっこんになる気持ちがよく分かりますよ!」
「あはは、ありがとう」
気さくな雰囲気の男の子は「もしお邪魔じゃなければ、少しだけ話しませんか?」と尋ねてくる。
頷けば、男の子は席を詰めて隣に腰掛けた。
「あ、俺田中っていいます! 椿に聞いてるかもしれないですけど、椿とはバーで出会って、それから仲良くしてるんです!」
「うん、椿くんから聞いてたよ。私は香月百合子っていいます」
「香月さん! 名前までお綺麗ですね!」
「本当? ありがとう。田中くんはお世辞が上手だね」
「いやいや、お世辞なんかじゃないです! 俺、本心しか話せないので!」
田中くんはコミュ力が高いらしい。
こうして二人きりで話すのは初めてのはずなのに、会話は途切れることなくぽんぽんと続いていく。