逃げられるものならお好きにどうぞ。
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業務が早く終わったので、定時より二時間も早く上がらせてもらえた。
「香月さんはいつも頑張ってくれてるからね。今日はもう上がって大丈夫だよ」
仕事でミスなんかは特にしていないはずだけど、佐々木ちゃんにも心配をかけてしまったようだし……もしかしたら、先輩も気を遣ってくれたのかもしれない。
厚意を有り難く受け取って、職場を後にする。
――久しぶりに服でも新調しようか。書店で気になった本を大人買いする、なんてのもいいかもしれない。そんなことを考えながら大型デパートにでも足を向けようと思っていたけど、空を見上げれば、あいにくの曇り空だった。
何となく気分が乗らなくて、とりあえず、目についたチェーン店のコーヒーショップに足を踏み入れる。
少しボーッとしながら頭の中を整理しようと思い、注文したアイス珈琲を受け取って、窓際のカウンター席に腰掛けた。
プラスチック容器には“あなたにたくさんのhappyなことがありますように”とニッコリマーク付きで書かれていた。店員さんの優しい心遣いに、色々と考え過ぎて疲弊していた心が癒される。
「あの、もしかしてお姉さんって……」
さっきから、一つ席をあけた右隣に腰掛けている男性に、チラチラ見られている気はしていたんだけど……とうとう、声を掛けられてしまった。
顔を向ければ、眩しい金色の髪をした男性が、私を凝視している。だけど多分、知り合いではない、と思うんだけど……。
「あ、やっぱり! あの、俺のこと覚えてないですか? クリスマスイヴの日、からくり時計の下で……」
「……あっ! あの時の……!」
――思い出した。椿くんの友達だと言っていた男の子だ。
あの時は暗めの髪色をしていたから、気づけなかった。