逃げられるものならお好きにどうぞ。


「あぁ、もちろん知ってるぜ」

「もしかして嬢ちゃんの知り合いが記憶を失くしちまったのか?」

「……はい、そうです」

「はー、そりゃあ可哀そうになぁ」

「俺らはなぁ、嫌なこともぜ~んぶ忘れられる、すげぇ薬を作ってるところなんだよ。そいつは多分、試作段階のやつだろうなぁ。可哀そうに、手違いで飲んじまったんだな」



どうやら、椿くんが記憶を失くしてしまったのは、この男たちが開発している薬を飲んでしまったからみたいだ。

どういう経緯で椿くんは口にしたのかは分からないけど……その薬は、明らかに合法のものではないだろう。



「あの、忘れてしまった記憶を元に戻す方法は……解毒剤のようなものはないんですか?」

「あー、まぁ、そっちも試作のもんがあるにはあるけどなぁ」



そう言った男が、胸ポケットから錠剤を取り出した。


……試作段階のものを椿くんに飲んでもらうのは、危険だろうか。

だけど、それを手に入れることができれば、事態が好転するかもしれない。

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