逃げられるものならお好きにどうぞ。
私の知らないあなた
十二月上旬。
一気に寒さを増して、マフラーが手放せない季節になってきた。
仕事終わり、同僚の三奈に誘われて飲みに行く。やってきたのはここ最近の行きつけとなっている“Bar curación”だ。
三奈はあれ以来、此処にはきていなかったようだ。
以前知り合った男性とは結局上手くいかなかったらしく、今日も素敵な男性を捜し求めてきたらしい。
「前に此処で会った人、すんごいタイプだったんだけどなぁ……。またあんないい男が現れないかしら」
「あぁ、はいはい。私を放って盛り上がってた、あの男の人ね」
「もう、あの時のことは何度も謝ったじゃない! ……え、もしかして百合子ってば怒ってるの? ごめんって~!」
「っ、ふふ、ごめんごめん。分かってるよ」
三奈ととりとめのない話を続けながら、カクテルで喉を潤す。
今日は黒瀬くんはお休みらしく、今店内に居るのはマスターと私たちだけだ。