Fahrenheit -華氏- Ⅲ
び―――……くり、したぁ…
だって裕二がこんな風に女に怒るってはじめて見たし聞いた。
怒鳴られた綾子は、言い返すことなくしゅんとして俯いた。
「啓人の話も聞いてやらないと」
「そうそ…事情があるって言うし、話し聞いてから判断すればいいんじゃないかな」と桐島もあせあせ。
この桐島を焦らせる綾子も相当つわものだな。
裕二が前髪をかきあげながら、タバコを口に含み
「あれだろ?あの件が関係してんだろ?こないだのHPの」
虚を突かれる、と言うのはまさしくこの通りなんだな。
裕二の言葉にまばたきさせていると
「何となく……あの時からお前変だったし、柏木さんが絡んでるんだろうな、って…」
裕二……お前も、何気に観察眼鋭いんだな…
と言うより、裕二は俺以上に俺を知ってて。
こんなこと前にも思ったことあるよな。(※Fahrenheit参照)
だが、説明するより早く俺の体は動いた。
俺は床に膝と手を付き、頭を下げた。
「俺が瑠華と別れたのは不本意なんだ。それはこれから話す。
けれど、何も言わず、俺に付いてきて欲しい。
お前らに協力してほしい」
床に頭がくっつくぐらいに頭を下げると、三人がまたも顔を見合わせた気配を感じた。