Fahrenheit -華氏- Ⅲ
「なるほど……全て繋がったぜ。柏木さんがやたらと羽振りがいい理由。
パトロンでも何でもない。もっと最悪な
“慰謝料”てヤツだったんだな」
裕二も床に視線を落とし眉間に皺を寄せている。
「……あんまりよ」
綾子が泣きながら肩を震わせていて、
「理不尽……だよな」
俺は半分程残った缶ビールを傾け、天井を仰いだ。
「でも、その元夫のそのバレンタインチョコ?が何でパーティーに?」
「バレンタインチョコじゃねぇ、ヴァレンタインだ」
俺が桐島を睨むと
「そうよ……何であの場にいたわけ?って言うかそうと知ってたら、もっと丁重にオモテナシしたのに!……ん?でもそうと知ってたらもっと冷たくした方が良かった?」綾子が首を捻る。
「まー、複雑だよな。瑠華の元旦那は超富豪で、けれど瑠華は繋がりを絶ちたいと思ってる」
俺は割けるチーズに手を伸ばし、細かくチーズを裂いた。
でもギリギリのところで分離させることをしなかった。
ギリギリ、繋がっている。
「マックスは瑠華とやり直したいんだよ」
俺が言うと、綾子と裕二は顔を見合わせ
「そんな感じだよね」と桐島は苦笑い。
桐島……お前、のほほんとしてるのに、ここに居る誰よりも観察眼鋭いな!
「逃がした魚は~ってヤツか?まぁ(色んな意味で)柏木さんレベル早々居ないがな」と裕二が呆れたように言い、割りばしで鯛の刺身をつまむ。
「そんなの都合良すぎでしょ?そもそも二人は何で別れたわけ?」と綾子がズケズケと聞いてきて
「まぁ?簡単に言っちまったら、マックスの浮気癖だろうな……夫婦だから俺たちには分からないもっと深い確執とかあったかもしれないけど」
「浮気?」
裕二は鯛の刺身を呑み込み、次いでマグロの赤身に箸を向ける。
「あれじゃない?毎日極上のステーキを食べてると、たまにお茶づけ食べたい、みたいな?」と桐島が肩をすくめる。
桐島……その例え…どうなの?
「まぁ、あの二人の関係は分かったし、離婚したんでしょ?
あんたもその所の事情を知ってて柏木さんと付き合ったんでしょう?
だったら何で、また別れたのよ」
綾子が苛立ちだろうか、髪を掻き揚げながらせっかちに言い、
「それには深い事情があって……」
俺は切り出した。
「深い事情って何よ、そんな過去がある彼女を好きになって、彼女もあんたのこと好きで居てくれる、何の弊害もないじゃない」
「綾子ちゃん……ちょっと…」と桐島がちょっと身を乗り出したが
「大体あんたは無神経過ぎるのよ、今まで女を食い物にしてきて!今度は柏木さんまで!?飽きたからポイ?」
「………」
俺が何も言えず黙って唇を噛んで俯いていると
「大体…」綾子がまたも口を開いたが
「綾子、少し黙ってろって!」
裕二が軽くテーブルを叩き、綾子を睨みつける。