Fahrenheit -華氏- Ⅲ
「ホントに大丈夫?」
店の外まで桐島が送りに来てくれて、若干ぐったりした瑞野さんを俺と桐島とで支えている、と言う状態。
「まぁ何とかなるだろ。とりあえず横浜方面に走って、後の細かい住所は綾子にでも聞く」
「それもそうだけど、見られたのが織田さんてとこ…」
桐島は瑞野さんに聞こえないぐらいの小さな声でこそっと俺に耳打ち。
「何、そうゆうの言い振り回したりする子?」
「うーん…まぁ?」と桐島は歯切れ悪く苦笑い。
はぁ
俺は盛大にため息をはいた。
「とりあえずプライバシーに関わることだから、って注意はしておくけど」
「つってもうちの会社、秒で噂が回るじゃん?お前が口止めしたって無駄だよ」俺は情けなく笑い「でも、サンキューな、ここまで付き合ってもらって」と桐島の肩を叩いた。
「俺は別に…」桐島が言いかけて、言葉を飲み込んだ。
「何?」桐島の視線の先を見たけれど、大通りを挟んだ向こう側は人の波が行ったり来たりしてるだけのように見えた。
「いや……さっき柏木さんを見た気が…」
「へ!?」
「でも……あくまで“気”だし。見間違いかも」
見間違い―――そうであってほしい。
俺は切に願った。