Fahrenheit -華氏- Ⅲ
瑞野さんは10分足らずで戻ってきた。オダさんも一緒だ。
「大丈夫?」俺より早く、残っていた桐島が聞いた。
ナイス桐島!
「……はい…ご迷惑をお掛けして…」と瑞野さんは恥ずかしそうに俯き、元の席へ戻ろうとしたが足取りが酷く危うい。
俺と桐島が慌てて支える、と言う状態。
「織田さん、お水と冷たいおしぼり持ってきて」と桐島がオダさんに指示。
「あ、はい!」オダさんは弾かれたように慌てて部屋を出ていった。
その間
「大丈夫?気持ち悪くない?立てる?」と桐島が瑞野さんに問いかける。
こうゆう客は珍しくないのだろう、桐島も慣れたものだ。
瑞野さんは首を横に振ったり、縦に振ったり。
「気持ち悪くはなさそうだけど、一人で帰すのは危ないと思う。瑞野さんちて確か横浜だったよね」
「JRで30分弱ってとこだな。電車は辛いかもしれないから、タクシーで俺送っていくよ。高速使ってもこの時間だから20分で着くだろ」
と話しあっている内にお冷とおしぼりが運ばれてきて
「大丈夫?これで顔冷やして」と桐島は瑞野さんの額におしぼりを押しあてる。
「……すみませ…」
瑞野さんは消え入りそうな声で弱々しく答えた。
「遅いし送っていくよ」俺が申し出ると
「いえ!それは大丈夫です」とは言ったものの、慌てて立ち上がろうとしたのか瑞野さんはまたもふらつく。
それを支えたのは今度は桐島だった。
桐島だからな、単なる店員と客。うん、不自然じゃない。
でも……
俺らが抱き合ってるのは不自然だっつーーの!
嗚呼…俺、やらかした↓↓