Fahrenheit -華氏- Ⅲ
ネクタイを緩めたせいか、それほどアルコールを入れていないのにこの妙な緊張感と疲労感が相まって、いつの間にかうとうと。
ガタンっ
車体が大きく揺らいではっと目が覚めると、俺の肩に瑞野さんの頭が乗っていた。
び…!くりして思わず後退しそうになったが、瑞野さんは心地良さそうに眠っていたし、起こすのも何だか可哀想だ。
……しかし…
手!
何で瑞野さん、俺の手握ってんの!?
握っていると言うか重ねている、と言うか。
俺の肩に乗った小さな頭。長い睫毛を伏せて心地良さそうに眠るその顔はやっぱり可愛くて、一瞬だけ瑠華に似てると思ったけれど、まじまじと見るとやっぱり似てなくて。
重い瞼を何度かまばたきして道路標識を見ると、どうやら横浜市内に入ったようだ。
「瑞野さん、もうすぐだよ」
肩を軽く揺すったが瑞野さんは「…ん」と小さく漏らしただけで起きてくる気配がない。
とりあえず、目的地に到着するまで寝かせておくか。
その方が変な気遣いとかしなくていいから楽………
と思ったが、瑞野さんが小さく身じろぎして眠ったまま淡い微笑を浮かべ
「部長――――
好き――――
です」