Fahrenheit -華氏- Ⅲ
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TRRRR…!
何時か分からないけれど、突如電話の着信音で起こされてあたしは重い瞼を何とかこじ開けてベッドの中から腕だけを伸ばし
音の鳴る方へ……ベッドのサイドテーブルに無意識に手を伸ばし、着信が誰かも確認せず
と言うかこの時間(はっきり確認してないけれどきっと真夜中よね)電話を掛けてくるのは誰か、なんてたかが知れてる。
どうせこんな夜中に電話してくる人は一人。
「Hey, It's me.ココ、今度は何?」と言うと相手は無言だった。あたしはスマホを持ちながらごろりと寝返りを打ち、しかし相手は無言だった。
「Say something.(何か言ってよ)Hello?(もしもし?)ココ―――?」
心音はそれでも無言だった。
何なの…?新手の嫌がらせ?
と、ここではじめて通話画面を見ると、
心音からじゃ――――
ない。
真っ黒の画面の中浮かび上がる白い文字は
“非通知”を表示していた。
何だろう……気味が悪い…
イタズラ電話?
眉をしかめて通話を切ろうとして
けれど一瞬の躊躇があった。
直感、と言うのがあったのならまさにそうだったに違いない。
「―――――……啓?」
そんなことがある筈もないのに、あたしは無意識に彼の名前を呼んでいて、名前を呼んだ瞬間、電話の相手が息を呑む気配があった。
あたしは殆ど何も考えず慌てて通話を切った。
スマホを胸の前で両手で握りしめ、ドキンドキンと暴れる心臓の中、機械の熱だけがやたらと熱い。
熱い―――……あったかい。
ごろりと再びベッドに横になる。
スマホを抱きしめたまま。
啓
声を聞きたい。
どうしてあなたは何も話してくれないの?
目を見て、ちゃんと本当のこと―――言って欲しいよ。
横たわったまま、何となく横を見るとすぐ近くにぴよこがいた。
あたしはぴよこのふわふわした頭をそっと撫で、
「あなたはあたしを見捨てないでね」ときゅっとぴよこを抱きしめた。
ぴよこから、あたしの大好きな香り
Fahrenheitが香ってきた。
以前、心音はあたしに聞いた。
『教えてよ。
どうしたら愛した男を嫌いになれるの?』
愛する人を忘れる方法なんて、あたしにも分かんないわよ、
心音―――