Fahrenheit -華氏- Ⅲ

狭い会議室に村木と二人っきり―――


野郎同士てとこにすでに「うげぇ」てな感じなのに、さらに村木と二人っきりってとこに「帰りてー!」と要素が加わる。


とりあえず手っ取り早く用事を済ませよう。


――――

――



「なるほど、神来社支社長を味方に……考えたものですね。


しかしまぁ、職質に合うとは」


立ったままの村木は腕組みをして顎に手をおき俺をしげしげと眺める。


うっせ!俺だって、そーなりたくてなったわけじゃねぇんだよ!と精一杯ガン付けが、その睨みにも怯まない村木は


「あなたは、本当に、強運の持ち主と言うか」と村木は……これは褒めてるって言うの??


興味深そうに頷く。


「強運?」思わず聞くと


「神来社支社長は緑川副社長の弟で緑川派だが、神流派の…(さき)の神来社常務に婿入りされた方だ」


「そ・こ・ま・で!知ってンなら先に教えておいてくださいよ!こっちからアプローチしたのに!」


思わず目を吊り上げると


「私も今思い出したところです。そもそも役員たちの歴史を全て覚えている程私も余裕がない」と村木はブスリと口を尖らせる。


ま、まぁそうだよな。村木の言ってることも一理ある。


ここで俺らが揉めても仕方ない。


何せにわかとは言え薩長同盟を組んだぐらいだからな。


「で、俺は神来社支社長にはあたかも緑川派のような振舞いで、緑川派の役員たちのスキャンダルなんかを探ってもらって、うまくいけば神流派に流してもらおうか、と。


紫利さんにはそれとなくどれぐらいの比率なのか会話で探ってもらおうかと思ってます」


「神来社支社長が寝返る可能性は?」と村木が目をあげ


「そこまで疑ってたらキリがない。裏切られたらそのときはそのとき。次の手を用意しますよ」


「次の手とは?」


「それはまだ状況が来てないので分かりませんが」


俺の言葉に村木は額を押さえ深いため息。


「あなたのその出たとこ勝負は、いつになっても直りませんね」


うっせぇ!




「俺には―――プランAしかない。プランBなんて考えてない。



そもそもプランBと言うのは、Aがうまくいかなかった場合のバックアップに用意される作戦だ。最初からそんな弱気では、プランA自体うまくいきませんよ?」





ニヤリと笑ってみせると、村木はちょっと目を開き顎を引いた。


「なるほど、そこまで強気だと逆に安心する気がします」と村木が頷いた。


いつだったか瑠華が言った台詞。


あのときの君の台詞、今俺の胸に響いて




生きているよ。


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