Fahrenheit -華氏- Ⅲ
「遅くなって申し訳ございません」
「早かったですね!」
二人の挨拶が交わって、あたしたちはお互いに顔を合わせた。
「あ、いえ!柏木補佐って残業が多いイメージだったから」と緑川さんは恥ずかしそうに舌を出す。
「今日は早めに切りあげてきました」
緑川さんが予約した部屋は二人にしては広すぎる部屋だった。
ゆうに5、6人は入れそう。
両側に長いソファが、そして中央にテーブル、突き当りの壁に大きなモニターがある。
ガラスのテーブルにポテトフライと、グラスに入ったジンジャーエール?が置いてある。
そこを見つめていると
「あ!すみません、ちょっと先に初めてました。お腹すいちゃって」と緑川さんはお腹の辺りを抱きしめ、ペロッと舌を出す。
「ここのカラオケ、フードメニュー結構おいしいんですよ、お酒も勿論ありますよ!」と大きなメニュー表を素早く手渡され「柏木補佐も夕飯まだですよね」と聞かれて
「あ、はい…」とまたも勢いに押されて頷いてしまった。
やたらと大きなメニュー表を開くと、ずらりと写真とメニューが載ってて
………
「緑川さんにお任せいたします」あたしは早々にメニュー表を緑川さんに返上することに。
「そうですか~?えっと葉月はから揚げと、シーザーサラダとぉ、春巻きとエビチリ。あ!あとカシスオレンジ。柏木補佐は何飲みます?」とまたも勢いよく聞かれ
「ではビールを…」と言うのが精一杯。
二週間程前、緑川さんは元気がなかったのに、元来の明るさを取り戻したようで少しほっとした。