Fahrenheit -華氏- Ⅲ
「俺はこんなだからさ、誰かを真剣に思ったこともないし、だから空汰が羨ましかった。
まぁアイツも今はそう思えないけどさ。
でも―――
瑠華ちゃんは凄いよ。
凄いって言うか羨ましい。
瑠華ちゃんも、
瑠華ちゃんに想われてる男も、仕事も―――」
あたしに―――想われてる
啓―――?
あたしはふいと顏を背け、葵さんの問いかけに
「あたしは、あたし自身どこへ向かえばいいのか
見失っていました。
今日はありがとうございます」
と後ろ向きにお礼を述べ、まっすぐに歩き出した。
あたしが向かう場所―――
それを葵さんが今日、教えてくれた気がした。