Fahrenheit -華氏- Ⅲ


店員さんは白い四角い箱を持ってすぐに戻ってきた。


「ございました。こちらで宜しいですか」


と聞かれ、箱を開いて現物を確認する。


「ええ、お願いいたします」と頷くと、今度は料金の説明になった。


「こちらの機種は二年で分割されると月々機種代と定額通信料がかかりまして」


最初は素直に話を聞いていたものの、一分で面倒くさくなった。


「分割は結構です。一括で」


と言うと、店員さんは目を丸めて


「一括で?」と復唱した。


「一括です。キャッシュで」あたしはお財布を開いた。さっきコンビニのATMでお金を下ろしてきたのだ。


啓が席を外している最中、佐々木さんから今の携帯の相場を聞いた。佐々木さんは10万あればいいのが買えると教えてくれた。


私はあまりカードを切ることが好きじゃない。アメリカでは当たり前のようにキャッシュレスを好まれるけれど、クレジットカードだと自分のものになった気がしないからだ。


だからマンションや車を買ったときも口座振り込みにした。


機種代金自体は9万弱と言った所だ。流石に月々の通信費はキャッシュとは行かず、そればかりは引き落としになったが。


きっちり万札を10枚出すと、店員さんは驚いたものの、すぐに契約してくれる客が嬉しいのかにっこり笑顔でカルトンに置かれたお札を数え、レジに向かった。


その後、簡単な操作を教えてくれて、結局一時間程携帯ショップにいる羽目になった。


帰る途中、冷蔵庫に食材があまりないことを思い出し、スーパーに行こうかと思ったけれど、料理をする気力もしない。そもそもあたし、料理苦手だし。


結局、またも手近なコンビニでお惣菜……と言うかいかにもつまみになりそうなものを数点購入してマンションに帰った。


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