Fahrenheit -華氏- Ⅲ
部屋についてバッグをソファに投げ出し、買ったばかりのスマホを早速PCに繋げ、バックアップしたアドレスや写真なんかのデータを移した。
早くシャワーを浴びたかったけれど、心配してくれてる心音に一番に電話を入れた。
運悪く、またもNYの時差計算をすると向こうは朝の5時。
シャワーを浴びてもう一度掛け直す?
あれこれ考えたけれど、とりあえずメールだけ入れた。
“心音へ
あたしは大丈夫よ、心配ありがと。また連絡する”
随分そっけない文になったけれど、あたしたちっていつもこんな感じだし。
送信ボタンを押してすぐに心音から電話が掛かってきた。
慌てて取ろうにも、改めて触るスマホにちょっとだけ戸惑った。あまり店員さんの説明を聞いてなかったあたしが悪い。
何とか通話になると
『Hi!』と心音の明るい声が聞こえてきて
「起きてたの?」
『まぁね、寝てない。急な仕事が入ってね』
「相変わらずね、それよりごめん…心配かけちゃって…紫利さんにも…後で謝っておく」
と言うと
『あんたが無事で良かった』と心音は心から安堵した様子だった。心音は―――あたしが精神的に病を患ってることを知っている。今も心療内科通いだと言うことも。
「ごめん、心配かけて」素直に謝ると
『いいよ、別に。それよりマックスがあたしに電話掛けてきたよ。瑠華に電話が繋がらないって』
「ああ……」
そう言えばそうだった。昨日“M”もといマックスから電話が掛かってきて、衝動的に壊してしまったのだ―――
「あの人いつそっちに帰るの?」
『さぁ、あたしも知らないけれど長居はするつもりはないんじゃない?ユーリも居るし』
「そうよね、居てもらっても困るし、何よりユーリのことが心配。ジェシカの元にいることを考えると」
あたしが声を低めると
『とりあえず、あいつには適当に言っておいたから安心して。あ、あんたが無事なことユカリから聞いて知ってたし、嘘はついてないし』
紫利さん―――
どこまでも親切で優しいひと
今持っているスマホと同じ名前を持つそのひとは
愛しいひとを共有した仲
だからか。
あたしは長年友達だった気がする。