Fahrenheit -華氏- Ⅲ
スコッチを飲みながら、一通り『知り合いかも?』の流れてきたアイコンとプロフィールを目に入れる。
「あ、佐々木さんだ。フォローしようかな」
とか
「ジェニーもやってるんだ。あ、これ鍵掛かってない。ふふっジェニーは相変わらず彼女さんと仲がいいわね」
とか
「あ、緑川さん」
知人だけでも色んな人が利用しているのを知って、ちょっと驚いた。けれど、殆どが社内の人だからこれだけフォローしたら逆に怪しまれるかも……
う゛ーん、とまたも唸っていると
その中で
「こいつもか…」
Max Valentine
を見つけて、げんなり。
『怪しいと思うのはフォローされた時点でブロックするといいよ』
またも葵さんの言葉を思い出し、しかし今の時点マックスからのフォローは来ていない。ブロックする必要もないか。しかも向こうのフォロワー数は10万越えだしあたしなんて気づかれないだろう。
と思いで何気なく
「あいつ、何投稿してるんだろう」とちょっと興味があった。
投稿は今から二週間前の昼間。
NYブロンクス動物園の動物たちが投稿されていた。いくつかの写真の一つに、あたしの記憶にある顔の少しだけ成長した
ユーリ……
の姿を見て、思わず口を覆った。
投稿内容は短く、休みだから娘と二人で動物園に行った、と言うものだった。
思わず顔を逸らしたくなったが、あたしの視線はユーリの笑顔にくぎ付けにされた。
拡大をしてみて、
「目元が……前よりあたしに似てきた……?ふふっ可愛い……可愛……」
ぽつり……
スマホの画面に水滴が落ちた。
鼻の奥でつんと嫌な痛みを伴い、あたしは慌てて鼻を啜った。
あたしはその投稿を閉じ、アカウント名設定のページに戻った。
『優里』
ユーリ、それともJulyと名乗りたかったけれど、できなかった。
24歳のユーリがどんな女の子に成長するのか、この先あたしには分からない。
けれどあたしは24歳のユーリを想って、
「You are 24 years old. You will be a wonderful woman!
(24歳のあなた。きっと素敵な女性になっているでしょう)」とプロフィール欄に一言添えた。