Fahrenheit -華氏- Ⅲ
てか裕二にも見抜かれてたとは……
三日間、片手程しか顔を合わせてないってのに。
「どーせ、まともなもの食べてないんでしょ。数日間で痩せた…て言うかやつれた感」
綾子は他人事のようにあっさり。まぁ他人事だがな、実際。
しかも食欲がないし作る意欲もないからゼリー飲料で済ませてた、図星っちゃ図星だな。
実際、だらだらと仕事をしてても一向に進まないし。
「今日は奢るから、まともなもの食べなさいよ」
と、ありがたーーーい、申し出。
結局、綾子の申し出を受けることにした。
が―――……
「奢るってコレかよ」
「へい、牛丼並一丁!」
と、威勢よくドンっと出された牛丼の並盛丼を見て目を細めた。
某有名牛丼チェーン店のカウンターで何故か隣り合って俺たちは牛丼を食うところ。
「栄養を付けるには肉でしょ、肉。とりあえず肉食って元気だしなさいよ」
「綾子……」
俺は綾子を見て目を潤ませ、目をまばたき。
「お前ってホント女?」見た目と声は女なのに、どーしても俺はこいつを“女”と見れない。
「うっさいわね!いらないなら私に頂戴!
因みにそれ柏木さんも食べてたわよ」
瑠華も!?
てか瑠華と牛丼……激しく不釣合いだぜ…
それでも俺は綾子の奢りだと思うと、むげには出来ず……何より瑠華が食べたものを食べたい……なんて、そんな些細なことでも彼女の足跡を追いかける俺って……
それでも結局、割りばしを手に
「いただきます」と頭を下げた。
綾子はついでに生(ビール)も頼んだ。
俺たちやることなすことおっさん二人だな。
二席開けた席でもサラリーマンぽい中年の男が牛丼とビールと言う組み合わせで食っている。
久しぶりに口にする個体は……それでもあまり旨いとは感じなくて俺の箸は早々に止まった。
その横で綾子はすでにビール一杯を空に、牛丼半分を平らげている。
「お前……俺より男っぽいな」
「あんたが女々しいのよ。柏木さんと何かあった」
ストレートに聞かれ、
「ぐっ」
牛丼を口に頬張っていた俺は喉に牛肉を詰まらせた。
慌てて水でそれを流し込む。
瑠華と別れた、と言うことは二村以外誰も知らない筈だ。
「顏に書いてあるわよ、いかにも“何かありましたー”って。柏木さんは全然読み取れなかったけど。あんた分かりやすっ」
綾子はカラカラ笑った。
慰めてるのか、バカにしてるのかどっちなんだか。