Fahrenheit -華氏- Ⅲ

「クリスマス……残念ながら僕は一人の寂しい夜です」と佐々木が苦い顔を作り


「私はNYから友達が来る予定ですので、彼女と過ごす予定です」と瑠華はいつも通り。


NYからの友達―――ってことはやっぱ心音ちゃん?


瑠華はピンクの髪の男と会う、と二村に言っていたがあの場のハッタリってことか?


その日の午前中は全然仕事に身が入らなかった。


目の前で真面目に仕事をする瑞野さんを意識しまくって、PC越しに目が合うだけで体が固まった。


途中


「部長、顔色悪いですけど大丈夫ですか?」と佐々木にまで心配される始末。


「本当ですね、医務室に行った方が」と瑠華もいつになく心配そうに眉を寄せていた。


「あー、大丈夫、大丈夫。ちょっと寝不足……?だから」


と言い訳してると


「啓人~お疲れ~、今ちょっといい?」と綾子が現れた。


綾子?天の助け……と言いたい所だがこいつも俺にいくつか隠し事してるみてーだし、気を緩められない。


「何?」目だけを上げてそっけなく言うと


「ちょっと話したい事があるんだけど、今度の同期会のことで」


同期会?んな話出てねーぞ、と思ったが綾子が何か俺に話したがっている、とすぐにピンときた。


「分かった。ごめん、俺ちょっと小休憩に入るわ。急ぎの案件も今は抱えてないしゆっくりしてて」と三人を見渡すと


「はーい」と返事が返ってきたのは佐々木だけだった。


俺たちは喫煙ルームに入ることになった。綾子が事前にその前を通ったであろう、そしてそこに今は人が居ないであろうことをチェック済だったんだろう、綾子は自然に喫煙ルームの扉を開いた。


「で?話ってのは?」


今更、瑞野さんの出向理由を教えてくれる、ってことはなさそうだったし、こないだ綾子にぞんざいにあしらわれたから俺も素直になれない。


「なぁに~こないだのことまだ怒ってるの?案外小さいわねあんたも」


小さい、言うな!お前が喧嘩(?)ふっかけてきたんだろ!


ようやく理由を話してくれる気になったか?と思ったが、予想に反した言葉が返ってきた。





「昨日、マックス・ヴァレンタインから連絡が来たわ」




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