Fahrenheit -華氏- Ⅲ
――――は?
「何で!お前ンとこに!」
「ああ、言ってなかったっけ。こないだのハロウィンパーティーで連絡先交換したのよ」
流石タラシなだけある。
顔(だけなら)美人な綾子に目を着けたんだな。相変わらずやること早ぇえな。
「言っとくけど変な関係じゃないからね。あたし、彼氏いるって向こう知ってるし。ただ、柏木さんのことが心配で時々報告してくれ、って。でも柏木さんに内緒でこそこそ彼女の元夫とやり取りするのは間違ってると思ってこっちから一度も連絡したことなかったんだけどね」
そりゃそーだ。綾子もそこんとこちゃんと良心があったんだな。←結構失礼
「で?何で急に向こうからお前んとこに?」
綾子はタバコを取り出すとゆっくりとそれに火を点し
「柏木さんには内緒でって言われたけど、彼クリスマス、サプライズで娘とこっちにくるみたいよ」
は―――?
「ユーリと!?」
くわえていたタバコがポロリと口からこぼれた。良かった~火を点ける前で。
「ねぇ、これってヤバくない?」
「ヤバイどろこじゃねーよ!」
愛する娘と一緒に来日だぁ!?これはピンクの髪の男より脅威だ。
「で、でも瑠華は心音ちゃんと会うって言ってたよ」
「ココネ?」綾子が目を細める。
「あー、お前知らないんだっけ。瑠華の親友。ってことは心音ちゃんも一枚噛んでるってこと??」
「知らないわよ、流石にこれはあんたに黙ってられることじゃないしね」ふー、と綾子は口から煙を吐き出しながら遠い目。
ヤバイ、ヤバイ、ヤバイ!!
瑠華にとってユーリの存在はピンクの男より俺より大切な絶対的存在。(言ってて悲しくなったぜ…)
「柏木さんを何とかその場に行かせないように気を付けた方がいいんじゃない?」
「んなこと言ったってなぁ、こっちは瑞野さんに…」
言いかけてはっとなった。
「そう言えば綾子、瑞野さんの本性知ってったんか?」俺が目を吊り上げると
「本性?」と綾子がきょとんとした。
「今更バックレたっておっせぇんだよ、あの子相当強者だぞ」
「バックレるも何も、あたしは瑞野さんの上辺だけしか知らないし。ま、仕事は早いしデキる子には違いないけど」と綾子が心外そうに目を吊り上げる。
ってことは綾子も瑞野さんの本性を知らないってこと―――?
『部長、木下リーダーから忠告されませんでした?
『女を舐めると痛い目に合う』と』
じゃぁあの言葉はどこから出てきたんだ。瑞野さんは自分の本性を隠しながら綾子まで巻き込んだってわけか。
俺が想像した以上に―――瑞野さんは手強い。