Fahrenheit -華氏- Ⅲ
俺の言葉、ちゃんと瑠華に届いたかな。
その場しのぎの誤魔化しとか思ったのかな……
瑠華は俯きながら片手を顔にやり
「永遠なんて言葉――――嫌い」
と一言。
やっぱり―――届かなかった……
「ごめんなさい……目にゴミが入ったみたいで……」
ダメ―――だな……俺、女の涙には弱いんだ。特に好きで好きで、どうしようもないぐらい好きで―――映画じゃないが世界の中心で愛を叫びたいぐらい、こんなにも気持ちが溢れているひとに、
隠し事はできない。ましてやこんな風に好きな人に目の前で泣かれては。
「瑞野さんが出してきた条件、それはクリスマスイブ俺と一緒に過ごして欲しいって」
「え―――?」
まだ涙が浮かんだ目を一生懸命隠そうとしているのか瑠華がしきりに目をまばたいて
「だけど彼女の出してきた条件はファミレスでも居酒屋でもいいから二人だけの時間を少しだけ過ごして欲しいってことだ。
その後のことは強要されていない」
「それが―――条件?」
瑠華がきょとんとした顔を作った。
無理もない。瑠華との復縁を天秤にかけるとしたならそれは瑞野さんにとってあまりに軽い。交換条件としては瑞野さんにとって不利。
「瑞野さんは言ってたよ。『約束された未来を取り返すため。あたしは奪い返したい』って」
「それって―――」
瑠華は羽織っていた白いジャケットからスマホを慌てて抜き取ると、何かを開き
「これじゃないですか?」と画面を見せてきた。
それは俺が以前佐々木から見せてもらったSNSで”優里”とアカウントがあった。
やっぱり―――”優里”は瑠華だったか―――でも何故SNSを―――?しかも鍵付きで申請しないと誰にも見られないような―――
その画面はDMで所謂SNSを通して誰でもメッセージが送れるような…そこに書かれていたのは
『”突然のDM失礼します。
優里さんは何となく信頼できる人だと思って勝手ながらDM送らせていただきました。ごめんなさい。
約束された未来を取り返すのはどうすればいいんでしょう。私は奪い返す勇気も度胸もありません。
優里さんならどうされますか?』
俺に言った言葉と同じ―――
俺たちは思わず顔を合わせた。