Fahrenheit -華氏- Ⅲ
「シャンパンもケーキもないけど、
メリークリスマス」
瑠華は涙を浮かべたまま小さく頷き
「HappyChristmas」と小さく呟く。
瑠華がそっと囁くと俺は彼女の頭をもう一度抱いた。
クリスマスイブ―――瑠華とは過ごせないと思ってたけれど
愛しいユーリと会ってた筈だろうに
俺を選んでくれてありがとう。
――――――
――
その後俺は瑠華に軽く事故の説明をした。あまり神妙なのは性に合わない。俺はいつも通りへらへらと笑ってみせた。それで瑠華が安心するなら尚更いい。
「笑いごとじゃありませんよ、あたしは勿論ですが村木さんも佐々木さんもすごく心配されて。後でちゃんと説明してくださいね」
駆けつけてきた男二人ってのは村木と佐々木か。何だか意外な組み合わせだが。
「うん」
瑠華は―――今何を考えているのだろう。淡い唇がほんの少し微笑を称えていて、すっげぇ
きれいだ。
キス
してぇ。
そんなことを思っていると、病室の外が少し騒がしくなった。
「ちょっと!今部長は処置中で!」と村木の少し大きめの声が聞こえてきた。村木はとっくに看護師の説明を聞き終えているであろうに敢えて俺たちに知らせるぐらいの―――
「怪我をされたんでしょう!?無事を確かめたらすぐに帰ります」と
瑞野さん―――!
俺たちは二人揃って口を覆った。そして思わず顔を合わせる。
そうだった。AKIYAMA企画までの納品が終わったら瑞野さんと会う、と言う約束が残っていた。
「瑠華、君がここに居たら今はマズイ。そっちの扉から出て」と俺は立ち上がると処置室の仕切りに使うカーテンをひいた。瑠華の腕をやんわりと掴むとそのカーテンの奥へと促す。
「啓―――」
瑠華が不安そうに眉を寄せ声をあげたが、俺は『大丈夫』と言う意味で笑ってみせた。
心はいつだって
君の傍に―――


