Fahrenheit -華氏- Ⅲ


そう……だった。あの時確かに瑠華と泊まる為、宿泊者の名前の欄に瑠華の名前を記入したんだ。


「それに、どう見たって分かりません?私たちが恋人同士だってこと」


瑠華は……見ようによっちゃ抱き締め合っている様子の俺たちを指さし、二人の刑事たちは困惑した様子だった。


「ってことはあの通報はガセネタってことか?」と男の方の刑事が頭をボリボリかく。


女の刑事の方は幾分か冷静で


「ところで瑞野 みゆきさんとあなた方はどういったご関係で?彼女の名前をご存知で?」と聞いてきた。


「私たちの同僚です。彼女が何か?」と瑠華がそつなく答えた。


はぁ


女の刑事の方が分かりやすくため息をついた。


「痴情のもつれってヤツですか。三角関係?」


「痴情のもつれって、そもそも瑞野さんとは何もありませんってば」と今度は俺が反論した。


「分かりました。とりあえず捜査の一環として他の部屋も見せてもらいますよ?」と男の方がズカズカと寝室に向かっていく。


マズイ!


まだ瑞野さんが眠っている筈だ。


ここで瑞野さんを見られたら話がややこしくなる。


俺は瑠華の両肩を引きはがし、慌てて刑事の後を追った。


バタン!


またも無遠慮に寝室の扉が開けられ、一瞬目を背けたが


「誰もいませんね」と刑事の一言で俺はベッドの方へ目を向けた。


あれ!??


確かにさっきまで瑞野さんが眠っていたはずなのに。羽毛布団はめくられ、枕が僅かに傾いていた。


てか瑞野さんは?


「無礼ですよ!寝室に無遠慮に入り込むなんて」と瑠華が声を荒げた。瑠華はちょっとやそっとのことで赤の他人にこんな風に声を荒げることがない。二村に対してもいつも冷静だったのに。


明るいリビングの光の中瑠華の白い肌は僅かにピンク色をしていた。


「さっきまで愛し合ってたのに」と次には涙声で瑠華が俺の胸へと崩れてくる。


愛……し合ってたーーーー!!!!!


なんていい響き!


って感動してるわけじゃないって。瑠華!女優だな!!!


男の方は耳まで顔を赤くしていたが、女の方は幾分か冷静で


「ご無礼申し訳ございませんでした」と女性警官が頭を下げ、「念のため、クローゼットの中を拝見しても?」と歩いていく。


ったく!どこまで疑い深いんだ!


瑠華はさっとクローゼットの前まで移動していくと、


「この中まで確認するつもりで?プライバシーの侵害だわ」と目を吊り上げた。


「簡単な確認だけですので」と男の方が若干たじろいで一歩後退する。


「では」と言って瑠華がほんの少しだけクローゼットを開け、


「先ほど私が身に着けていた”もの”です。ご確認したいなら署に持ち帰ってください。DNA検査でもお好きにどうぞ」


とクランベリー色の鮮やかな


ブラ!?


を手でひらひら。


い、いつの間に!?


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