Fahrenheit -華氏- Ⅲ
見知らぬスーツ姿の男女が険しい表情を浮かべて無遠慮にホテルに入ってきた。ホテルの従業員の制服じゃないし、どこか異様な雰囲気だ。
誰だ!マックスの追手か!?
俺は瑠華を守るように彼女の肩をぎゅっと抱きしめ、瑠華も知らない男女の突然の登場に驚きを隠せないのか珍しく俺に縋ってきた。
見知らぬ男女は三十代~四十代日本人だと思われたが、どう見てもホテルマンではなさそうだ。そもそもホテルマンはこんな無粋なことをしない。
「な、何ですか、あんたら」俺の方が威嚇で先制攻撃をくらわしたが
「警視庁の者です。神流 啓人さんで間違いありませんか?」と男の方が聞いてきて、ついでにテレビや映画でしかみない警察バッジを掲げた。
は!?ケーサツ!
一瞬、さっきの事故処理のための聴取かと思ってたが雰囲気がどうみてもおかしい。お、俺何もやってねーぞ!?
「瑞野 みゆきさん?」と女性警官が瑠華に聞いて瑠華は慌てて「違う」と言う意味で首を振った。
は?何で瑞野さんの名前を??意味が分からない。
女性警官は懐から何かの紙を取り出し
「確かに、雰囲気は似てますが瑞野さんではありませんね。あなたは?」とキビキビした口調で瑠華に聞き
「その前に何故警察がここに?」と瑠華が持ち前の短気……って言っちゃ悪いよな、で聞き返した。
「匿名で通報があったんですよ。神流 啓人さんが瑞野 みゆきさんをストーカーしてて彼女を強引にここに連れ込んだ、と言う」
はぁ!?ストーカー!!?つか若干ストーカー気味なのは瑞野さんの方じゃね!?
「じょ。冗談言わないでくださいよ!彼女が一方的に…!」と俺が言おうとすると、瑠華がさっと俺を見て「しっ!」と声を低めた。
「話が見えませんが、彼の恋人は私です。このホテルだって今日、私の為に予約してくれたんですよ?
疑うならまず予約サイトを確認してから来てください。宿泊の同行者名に私の名前が載っている筈ですから」