Fahrenheit -華氏- Ⅲ

そこからタクシーを拾ってあたしは心音と一緒に六本木のマンションに戻った。


バッグをソファに叩きつけると


「何なの!あのクソ野郎!」と怒鳴った。あたしの背後でその様子を見ていた心音が


「まぁ、ユーリが無事で良かったじゃない」


「そういう問題じゃないわよ!卑怯にも程があるわ!」


「裏を返せば、そこまでしてあいつ(マックス)は瑠華に会いたかったんじゃない?」


「だからってやり方が卑怯よ!」


昨日散々飲んだって言うのに、あたしは食器用のチェストからバカラのグラスを取り出すと、キッチンに向かった。


カウンターバーに並べてあるスコッチの瓶を乱暴に手に取ると栓を抜いた。


心音もチェストからグラスを取り出すと


「付き合うわ」と言って苦笑い。


二人分のグラスに勢いよくスコッチを注ぐとやや乱暴にグラスを合わせ、一気飲みした。


「瑠華、気持ちは分かるけれどそんな飲み方したら」


「分かってるわよ。でもやってられないわ」とカウンタバーに手を付きギリギリと爪を立てていると


はぁ……心音が盛大にため息をついた。


心音は向こう側にあるキッチンのカウンターバーのスツールに腰を掛けると


「今回はあいつのやらかしたこと許せることじゃないけれど、あれ以上騒ぎを起こさなくて良かったわよ。警察でも呼ばれたら」


そう―――なのだ。ある意味心音が居てくれて良かったかもしれない。


「ごめん……心音にも迷惑を……」


「あたしは大丈夫よ。ユーリにも会えたし。まぁ元々あたしが勝手に電話を取っちゃったのにも原因があるしね」と心音は強引に笑って肩を竦める。


心音―――


「それに関しては怒ってはないわ。結果ユーリは無事だったし。無視し続けてもきっとずっと掛かってきたろうし」


「ある意味早く解決できて良かったのかも」と二杯目のスコッチを注ぎ入れ、今度はゆっくりと喉に通した。


さっきは怒りでその味さえゆっくりと味わうことはなかったけれど、焼けつくようなアルコールとスコッチ独特の苦みや香りがゆっくりと喉を通っていくのを感じられた。


心音の言う通り、あそこで騒ぎを起こすわけにはいかなかった。


改めて思う。心音が居て良かった―――と思う。


持つべきものは親友ね。


ありがとう、心音。


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