真昼の星空
「北海道ついたよ。
これから札幌の書店でイベント。
チケットも今日も明日も完売だって。
よかった。」

送信。

(まさくんに最初に言いたかった)

すぐ既読。

「凄い人気だね!頑張ってね!」

続けて。

「美味しいもの食べる時間ありそう?」

陽少し笑う。

(そういうとこ昔から優しい)

返信する。

「サイン会が終わる時間によっては、コンビニかも」

でもすぐ続ける。

「でも沢山来てくれたら嬉しいから大丈夫!」

少し迷って。

「またホテル帰ったら電話しちゃうかも」

送信。

数秒。

既読。

「電話いつでもいいよ」

さらに。

「電話来るまで起きてる」

陽笑う。

(寝なさいよ)

さらに来る。

「頑張ったご褒美に声聞かせて」

陽の胸が少し温かくなる。


「終わった。」

少しだけ疲れた指で打つ。

「まさくんも終わった?」

すぐ既読。

「さっきホテル帰ってきたよ」

続けて。

「商談成立した。」

陽の顔が明るくなる。

「おめでとう!よかったね!」

雅人すぐ返す。

「胡散臭いスーツのおかげ」

陽吹き出す。

「ごめんて。」

すぐ送る。

雅人
(笑)

陽少し迷う。

でも送る。

少し間。

本音。

「あのね、本当はかっこいいっておもったの。」

雅人止まる。

陽続ける。

「10年振りの再会が素敵なスーツ姿で。
動揺したし。」

送信。

(言っちゃった)

既読。

少し間。

「ねえ、電話していい?」

陽少し笑う。

(わかりやすい)

「シャワーしたら私からかけるね」

「わかった」

さらに。

「急がなくていいからね」

その一言が優しい。

陽少し思う。

(こういうとこ…)

(好きだったな)

陽から電話する。

ワンコールで出る。

「もしもし」

その声だけで少し安心する。

他愛ない会話が続く。

今日のイベントの話。
福岡の話。
食べたものの話。

少し沈黙。

雅人がぽつりと言う。

「ようちゃんさ…3ヶ月前に別れたやつの事さ、まだ忘れられないでしょ?」

陽一瞬止まる。

「え?」

正直。

(忘れてた)

少し考えて。

「うん。まぁ。」

雅人少し息を吐く。

そして静かに言う。

「だったらさ」

「今度は俺が毎日ようちゃんに好きって言って」

陽黙る。

雅人続ける。

「そいつのこと思い出さないくらい抱きしめる。」

陽の目が潤む。

でも声は普通に。

「ありがとう」

本音が漏れる。

「なんか会いたくなってきた」

雅人即答。

「俺も。早く会いたいよ。」

陽小さく笑う。

でも目から涙が流れる。

「遠いね。」

(泣いてるのバレないように)

「明日も頑張ろうね。」

雅人少し違和感。

(え?)

(声…)

(泣いてる?)

でも聞かない。

優しく言う。

「…うん。」

そして。

「またいつでも連絡して。」

「ようちゃんからならいつでも嬉しいから。」

陽涙が止まらない。

「うん。ありがと。」

小さな声。

「おやすみ。」

電話が切れる。

雅人しばらくスマホを耳に当てたまま。

(泣いてた?…)

電話を切ったあと、陽はぼんやり天井を見ていた。

すっかり忘れてた。

3年半も付き合っていたのに。

3ヶ月前まで一緒にいたのに。

名前を思い出そうとしても、
感情がついてこない。

というか…そこまで引きずってもいなかった。
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