真昼の星空
30歳を過ぎてからの交際だった。

だからお互い、
結婚は意識していたはずなのに。

穏やかだった。

優しかった。

一緒にいて楽だった。

好きだった。

でも――

胸が苦しくなるほど会いたいと思ったことはあった?

仕事の合間に声が聞きたくなった?

LINEの通知でドキドキした?

少し考える。

静かに気づく。

…なかったかも。

スマホを見る。

雅人の名前。

今日だけで何回やり取りしただろう。

電話の声。

「毎日好きって言う」

その言葉思い出す。

胸が熱くなる。

ああ。

小さく思う。

私、また恋してる。

逃げるように目を閉じる。

10年前と同じ人に。


雅人はベッドに倒れ込む。

天井を見る。

静かなホテルの部屋。

手のひらを開く。

あの日、新幹線のホームで少しだけ触れた指先を思い出す。

レストランの帰り道。

並んで歩いた夜。

ほんの一瞬触れた温度。

その感覚がまだ残っている気がする。

手を見つめながら小さく呟く。

「早くこの手で抱きしめたい。」

自分でも驚くほどまっすぐな気持ちだった。

欲しいのは身体じゃない。

逃げないように。

消えないように。

もうどこにも行かないように抱きしめたい。

目を閉じる。

涙が静かに流れる。

10年前は出来なかったこと。

守れなかった距離。

言えなかった言葉。

今度こそ。

小さく息を吐く。

「もう絶対離さない。」


羽田に21:20に着くよ
まさくんは何時?

雅人すぐ見る。

少し嬉しい。

(帰る時間教えてくれるんだ)

返信する。

18時だよ。

すぐ続ける。


気をつけてね!
今日もお客さん沢山来てくれてる。頑張ってくるね。

雅人少し笑う。

(忙しいのに送ってくるんだ)

返信。

ありがとう。

少し考える。

終わったら連絡して。

送ろうとして消す。

(重いかな)

打ち直す。

がんばってね。

送信。
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