真昼の星空
「お邪魔します。」

靴を脱ぎながら少し緊張する。

「ちょっと緊張。」

雅人笑う。

「ようちゃんそこ座ってて。」

キッチンへ向かう。

冷蔵庫から白ワインを出す。

グラスに静かに注ぐ。

陽の前に置く。

「どうぞ。」

陽受け取る。

(こんなこと昔もしてくれてたな)

思い出す。

雅人は手際よく料理を始める。

野菜を切る音。

フライパンの音。

無駄がない動き。

陽見つめる。

(大人になったな)

立ち上がる。

「手伝う!」

すると雅人振り向かずに言う。

「ようちゃんはワイン飲んでて。」

続けて。

「今日は俺がやるから。」

陽座る。

少し笑う。

(至れり尽くせり)

グラスを口に運ぶ。

美味しい。

雅人の背中を見る。

安心する背中。

思わず呼ぶ。

「まさくん。」

雅人振り向く。

「なに?」

陽少しだけ真剣な顔。

「ありがとう。」

雅人少し驚く。

「え?」

陽小さく言う。

「こういう普通の時間、欲しかった。」

雅人何も言えなくなる。

ただ笑う。

「俺も。」

キッチンに立つ雅人の背中。

包丁の音。

フライパンの音。

その背中を見ていて思う。

(この人を好きだったんだ)

(ずっと)

気づいたら立ち上がっていた。

静かに近づく。

そして――

背中に抱きつく。

雅人の手が止まる。

驚いてるのがわかる。

陽小さく言う。

「なんか…」

雅人動けない。

背中越しに感じる温度。

陽の腕の力。

震えているのがわかる。

雅人小さく聞く。

「…どうしたの?」

陽は顔を背中に埋める。

「まさくんがいるのが嬉しい。」

雅人目を閉じる。

フライパンの火を止める。

ゆっくり振り向く。

陽の腕をほどいて、

今度は正面から抱きしめる。

優しく。

「俺も。」

「ようちゃんがここにいるのが嬉しい。」


乾杯。

グラスが静かに触れる。

「まさくん凄いねこんなに。美味しそう。」

テーブルいっぱいの料理。

雅人少し照れる。

「ぶどう農園のお母さんに教わったの。」

「美味しい!沢山食べちゃいそう。」

一口食べて笑う。

「太っちゃう。」

雅人即答。

「ようちゃん痩せすぎだから太りな。」

陽笑う。

「痩せすぎではないよ。」

少しだけ自嘲気味に。

「なんか中年になって体型だいぶ変わっちゃったし。」

雅人すぐ言う。

「変わってないよ。」

陽笑う。

「それは思い出補正。」

少し間。

陽聞く。

「それよりさ、まさくん色んな国行ったでしょ?」

「どこが1番よかった?」

雅人少し考える。

ワインを一口飲む。

「どの国も素晴らしかったんだけど…」

少しだけ遠くを見る目。

「ニースは素晴らしかった。」

「海が綺麗で、街が優しくて。」

そして陽を見る。

「いつかようちゃんといきたい。」

陽止まる。

フォークを持つ手が止まる。

「…え?」

雅人自然に言う。

「一緒にワイン飲んでさ。」

「海見ながら散歩して。」

「何も予定入れないで。」

静かに続ける。

「そういう時間過ごしたい。」

陽は何も言えない。

胸が苦しい。

(未来の話してる)

(私と)

小さく言う。

「…いいね。」

そして笑う。

「パスポート期限切れてるけど。」

雅人笑う。

「更新しといて。」
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