気付けば、隣にいた  - 無愛想な同居人は、不器用に優しい。 -
1.引っ越し、再会、それから出会い。

桜ノ木ハウス



桜のつぼみも少しずつ膨らみ始めている。

春。


「それでは、お願いします」


元々住んでいたアパートが老朽化で取り壊されることになり、急遽引っ越しをすることになった。

今日はその引越し日。

1年住んだこの部屋にあった荷物は、全て引越し業者がトラックに積み込んだ。

たった1年、されど1年。

住み慣れてきたところだったから、少し寂しさを感じている。


「ここでいろんなことがあったな〜」


テスト対策のため徹夜で勉強した。

友達とお泊まりもした。

いろんなことを話した。




失恋した時は _____



ここでたくさん泣いた。




私、真田 茉桜(さなだ まお)は、半年前に失恋したばかり。


高校生の頃から2年半付き合った元彼・久世 湊都(くぜ みなと)。

好きだった。

本当に。


別れた理由は、湊都の浮気。

高校は同じ学校に通っていたけど、大学はお互いの夢をおいかけ、別々の道へ。

その中で、会う機会や連絡の頻度が減るし、友達からの情報で浮気は発覚するしで、もう最悪だった。


「ちゃんと話がしたい」

「返事してほしい」


勇気を振り絞って連絡して、湊都から返ってきたのは


「茉桜って重いよな」


って言葉だけ。

話す気にもならず、私たちはそのまま終わりを迎えた。


引っ越し準備中、湊都との写真が出てくるたび、少し苦しくなる。


“新生活”


なんて言われても、正直まだそんな気分じゃなかった。

< 1 / 196 >

この作品をシェア

pagetop