気付けば、隣にいた - 無愛想な同居人は、不器用に優しい。 -
1.引っ越し、再会、それから出会い。
桜ノ木ハウス
桜のつぼみも少しずつ膨らみ始めている。
春。
「それでは、お願いします」
元々住んでいたアパートが老朽化で取り壊されることになり、急遽引っ越しをすることになった。
今日はその引越し日。
1年住んだこの部屋にあった荷物は、全て引越し業者がトラックに積み込んだ。
たった1年、されど1年。
住み慣れてきたところだったから、少し寂しさを感じている。
「ここでいろんなことがあったな〜」
テスト対策のため徹夜で勉強した。
友達とお泊まりもした。
いろんなことを話した。
失恋した時は _____
ここでたくさん泣いた。
私、真田 茉桜(さなだ まお)は、半年前に失恋したばかり。
高校生の頃から2年半付き合った元彼・久世 湊都(くぜ みなと)。
好きだった。
本当に。
別れた理由は、湊都の浮気。
高校は同じ学校に通っていたけど、大学はお互いの夢をおいかけ、別々の道へ。
その中で、会う機会や連絡の頻度が減るし、友達からの情報で浮気は発覚するしで、もう最悪だった。
「ちゃんと話がしたい」
「返事してほしい」
勇気を振り絞って連絡して、湊都から返ってきたのは
「茉桜って重いよな」
って言葉だけ。
話す気にもならず、私たちはそのまま終わりを迎えた。
引っ越し準備中、湊都との写真が出てくるたび、少し苦しくなる。
“新生活”
なんて言われても、正直まだそんな気分じゃなかった。