気付けば、隣にいた - 無愛想な同居人は、不器用に優しい。 -
講義と学園祭の準備が並行して進む、この時期。
最近は、学内を歩き回ることが増えた。
建築学科の作業場と講義室を往復していた頃とは違う。
共用倉庫。
ラウンジ。
実行委員の控室。
必要なものを取りに行ったり、打ち合わせに呼ばれたり。
気付けば、大学中を歩いている。
そのおかげで、家のやつらともよく会うようになった。
制作で汚れたエプロン姿のまま、自販機の前でジュースを選ぶ希遥。
実行委員としてあちこち走り回り、後輩に囲まれている柊弥。
そして。
教育の友達と楽しそうに笑っている茉桜。
……
最近、あいつを見かけることが増えた。
いや。
増えたんじゃない。
前からいたんだろう。
俺が気付くようになっただけだ。
教育は人数が多い。
男も女も関係なく、いつも誰かと話している。
あいつも例外じゃない。
笑って。
手を振って。
楽しそうに話している。
「真田ー!」
「今行く!」
友達に呼ばれて、小走りで駆けていく。
……相変わらず落ち着きがない。
「想?」
逸晟の声で我に返る。
「何見てんの」
「別に」
そう答えて歩き出す。
本当に、別に。
同じ家に住んでいる。
だから目に入る。
……それだけだ。