気付けば、隣にいた - 無愛想な同居人は、不器用に優しい。 -
「フルーツ飴、準備はどうですか?」
「……柊弥さん!」
「忙しそうだね」
「どこの模擬店も大忙しだよ。特に1日目はみんな勝手が分からないからね」
実行委員の柊弥さんは、模擬店を回って準備の確認をしているらしい。
腕には実行委員の腕章。
さっきからあちこちで呼び止められていて、本当に忙しそうだ。
「足りないものとか困ったことがあったら、本部にいるからいつでも来てね」
「ありがとうございます!」
柊弥さんは笑顔で手を振ると、次の模擬店へ向かっていった。
その後ろ姿を見送りながら、ふと周りを見る。
……やっぱり。
学内で柊弥さんと話していると、どこからか視線を感じる。
「柊弥先輩だ」
「あっち見て」
そんな小さな声まで聞こえてくる。
最初の頃は、「変に見られてるんじゃないかな」と落ち着かなかった。
でも最近は、それにも少しずつ慣れてきた。
「茉桜!瑠斗!侑雅!」
奈瑠がパンっと手を叩く。
「はいはい」
「なんだよ、奈瑠」
「妙に気合い入ってるじゃん」
瑠斗が笑う。
「空回りすんなよ?」
侑雅も肩をすくめた。
「だって、せっかくの学祭だよ?」
奈瑠はにやっと笑う。
「来年は教育実習で、こんなふうに準備する時間なんてないかもしれないし」
「それはあるな」
「だから今年は思いっきり楽しむ!」
奈瑠が拳を上げる。
「よし!フルーツ飴、頑張るぞ!」
「おー!」
「いぇーい!」
「おっしゃ!」
私たち4人の声が重なる。
その直後。
校内放送が静かに流れ始めた。
『ご来場の皆さま、お待たせいたしました。ただいまより、第73回学園祭を開催いたします』
拍手が起こる。
キャンパス中が、一気に動き始めた。