気付けば、隣にいた - 無愛想な同居人は、不器用に優しい。 -
開場から30分。
「フルーツ飴いかがですかー!」
「できたてでーす!」
思っていた以上に人が多い。
高校生くらいの子たち。
親子連れ。
卒業生らしき人。
キャンパスのあちこちが笑い声であふれている。
「茉桜!いちご追加お願い!」
「はーい!」
串に刺したいちごを受け取り、飴液へくぐらせる。
くるりと回して冷ますと、つやつやとした飴が光を反射した。
「わぁ、かわいい!」
受け取った女の子が嬉しそうに笑う。
「ありがとうございます!」
その笑顔を見ているだけで、自然と私まで嬉しくなった。
「これ、写真撮ろ!」
「映える!」
模擬店の前では、フルーツ飴を手に写真を撮る人もいる。
みんなで何週間も準備してきた看板も、思っていた以上に目立っていた。
『おいしい!かわいい♡フルーツあめ』
手描きの文字を見て、思わず少しだけ笑う。
あの看板を運ぼうとして転びそうになったことも、今となってはいい思い出だ。
「茉桜」
後ろから奈瑠に呼ばれる。
「ちょっと落ち着いてきたし、交代で見て回らない?」
「いいの?」
「うん。戻ってきたらまたお願い!」
「ありがとう!」
私はエプロンを整えて模擬店を出た。
歩くだけで、お祭りの匂いがする。
焼きそば。
たこ焼き。
クレープ。
どこも行列ができていて、活気にあふれていた。
「すごい……」
去年は来場者として歩いていたキャンパス。
今年は出店する側として見る景色が、なんだか少しだけ新鮮だった。