気付けば、隣にいた - 無愛想な同居人は、不器用に優しい。 -
コートのポケットに手を入れながら、私たちは並んで歩く。
深夜0時を回った住宅街は昼間とはまるで違っていて、静かな空気の中を時折笑い声が通り過ぎていく。
同じように初詣へ向かう人たちだろう。
「思ったより人いるね」
「年越しだからな」
想くんは前を向いたまま答える。
私は白くなる息を見つめながら、小さく笑った。
「去年の今頃は、家で1人だったなぁ」
思わず口をついて出た言葉だった。
一人暮らしをしていた頃は、大晦日も年越しもいつも通り。
テレビをつけたまま、なんとなく年が変わる瞬間を迎えて、そのまま寝てしまうこともあった。
「今年は賑やかだった」
「そうだね」
クリスマス忘年会をして、みんなで笑って。
柊弥さんと希遥さんは帰省してしまったけれど、それでもこうして誰かと新年を迎えられている。
それだけで、去年とは全然違う年越しだった。
「……この家に来てよかった」
ぽつりと呟く。
想くんは少しだけこちらを見ると、小さく「そうか」と返した。
それ以上は何も言わない。
でも、その短い一言がどこか優しかった。
しばらく歩くと、遠くから賑やかな声が聞こえ始める。
「あ、見えてきた」
住宅街を抜けた先、小さな神社には想像していたより多くの人が集まっていた。
参道には屋台が並び、湯気の立つ甘酒や焼きそばの匂いが冬の空気に混ざって漂っている。
「わぁ……」
思わず足を止める。
「お祭りみたい」
「毎年来てる人が多いんだろ」
鳥居の前では、家族連れや友達同士、恋人らしき2人組が楽しそうに話していた。
「行こうか」
「うん!」
人の流れに合わせて鳥居をくぐる。
新しい年の始まり。
冷たい空気の中、不思議と胸は少しだけ温かかった。
この1年も、こんなふうに笑って過ごせたらいい。
そんなことを思いながら、私は想くんの少し後ろを歩き、ゆっくりと境内へ足を踏み入れた。