気付けば、隣にいた - 無愛想な同居人は、不器用に優しい。 -
「え?」
思わず聞き返す。
「俺、ここ数年行ってない」
「そうなの?」
「実家いた頃はばあちゃんに連れてかれてたけど」
「大学入ってからは面倒で」
想くんらしい理由だと思って、少し笑う。
「いいね、行こう!」
私がそう言うと、
想くんは「ん」とだけ返事をした。
それだけなのに。
なんだか少し嬉しかった。
0時ちょうど。
テレビから新年を祝う声が流れ始める。
「明けましておめでとう!」
「……おめでとう」
「今年もよろしくね」
「……ん」
コートを羽織り、マフラーを巻く。
玄関を出ると、夜の空気は冷たい。
吐く息は白く、星が冬空に静かに瞬いていた。
並んで歩く住宅街。
人通りは少ない。
少し先には、初詣へ向かう人たちの姿が見える。
「寒い」
「言うと思った」
「だって寒いもん」
「ほら」
そう言って想くんは、自分のポケットから小さなカイロを取り出し、私へ差し出した。
「買っといた」
「え?」
「余ってたから」
ぶっきらぼうな言い方。
でも、その手は少しだけ照れくさそうだった。
私は思わず笑ってしまう。
「ありがとう」
「……ん」
新しい年が始まる。
今年は、どんな1年になるんだろう。
そんなことを考えながら、私たちは並んで神社への坂道を歩いていった。