パーフェクト・ネイル ~憧れの上司に狙われている、かもしれません~
 出会いのチャンスが白紙になったと嘆く女子三人を、主任である遠坂が『俺が晩飯奢ってやるから、我慢しろ』と宥めた。そこに全力で乗っかり、合コンに一切関係のない男子の和泉も交えて、チーム五人で残業の打ち上げをすることになったのだ。

 その酒の席で和泉が突然、『実は俺、声フェチなんだよね』と聞いてもいない自身の性癖を暴露し始めた。酔っていたと思われる。

 話を聞いた女子三人から『何それ?』『言わなくていい』『知りたくなかった』と総攻撃された和泉を、遠坂が庇った。『まぁまぁ、男なんだから、フェチの一つや二つあって当然だろ』と。

 和泉のときとは打って変わって、白川が『え、主任にもフェチとかあるんですか?』と目を輝かせた。些細な質問は笑顔で流されてしまったが、そのやりとり以降、椛はずっと気になっていたのだ。

 密かに憧れている上司、遠坂琉生のフェチなるものを。彼の秘密の性癖とやらを。

 しかし椛をちらりと見下ろした遠坂には、一切の隙がない。

「内緒」

 小さな笑みを浮かべた遠坂が、椛の質問をさらりとかわそうとする。
< 2 / 10 >

この作品をシェア

pagetop