尊い推し兄弟に愛されてます!?
「は、走ったからだよ!」
「そ?」
「ていうか……いつまでこの体勢……?」
「んー。もうちょい」
人通りは確かにないはずなのに、中々離れてくれない。
「ねぇ……」
「ん?」
「もしかして……面白がってる?」
「まさか。周りにお前の顔見られたらまずいからだよ」
「そ、そうなの……?じゃ、もう離れていいんじゃ……」
近すぎて頭がクラクラしてくる。
「……しょうがねーな」
ぽつりとそう呟き、やっと解放してくれた。
〝しょうがねーな〟って?
「はぁ。まともに顔出して歩けねーのがこんなに辛いとか」
「玲央くん……」
「ん?」
「当たり前だけどさ」
少し笑いながら。
「どんどん遠い存在になっちゃうんだね」
それに対して玲央くんが黙ったけど、私は続けた。
「雑誌とかテレビとか、SNSもすごいし……みんなの玲央くんになっちゃうんだなぁって」
胸が少しだけ痛かった。
すると、玲央くんが呆れたように笑う。
「遠くねぇよ」
「え?」
「家近いし」
私は思わず吹き出した。
「そこ!?」
「大事だろ」
玲央くんも少し笑う。
そして、少しだけ真面目な顔になった。
「いつでも会えるし」
胸が跳ねる。
「俺は変わんねぇよ」
その言葉が、どうしようもなく嬉しくて。
苦しくて。
私は何も言えなくなってしまった。
夕暮れの風だけが、静かに二人の間を通り過ぎていった。