尊い推し兄弟に愛されてます!?

「兄ちゃんじゃなくて……俺を選んでくれた人なんだから」

「それでも!」

私は思わず声を強くした。

すると、ゆずくんが立ち止まる。

そして、真っ直ぐに私を見た。

「じゃあさ」

その声は静かだった。

「いっちゃんが俺のこと選んでくれるの?」

「え……」

一瞬、言葉が出なくなる。

「それは……」

「ほら」

ゆずくんが小さく笑った。

でも。

その笑顔は少し寂しそうだった。

「違うじゃん」

そう言って、先に歩き出してしまう。

「ゆずくん!」

呼び止めても振り返らない。

どうしよう……大丈夫かな……。

まさかゆずくんに、そんな関係の人がいるなんて。

私はその背中を見つめることしかできなかった。



この日はずっと、ゆずくんのことばかり考えてしまっていて。

私は朝の出来事が頭から離れない。

〝兄ちゃんじゃなくて、俺を選んでくれた〟って……。

やっぱり兄弟は比べられるのが嫌なのかな。

ゆずくんはゆずくんなのに……な。

あんな風に怒らせるつもりじゃなかったのに。

なんだか昨日までのゆずくんとは少し違って見えた。

「はぁ……」

小さくため息をついた、その時――。

「いっちーーーーー!!!!」

教室のドアが勢いよく開いた。

ひまりだった。

嫌な予感しかしない。
< 69 / 124 >

この作品をシェア

pagetop