尊い推し兄弟に愛されてます!?
「兄ちゃんじゃなくて……俺を選んでくれた人なんだから」
「それでも!」
私は思わず声を強くした。
すると、ゆずくんが立ち止まる。
そして、真っ直ぐに私を見た。
「じゃあさ」
その声は静かだった。
「いっちゃんが俺のこと選んでくれるの?」
「え……」
一瞬、言葉が出なくなる。
「それは……」
「ほら」
ゆずくんが小さく笑った。
でも。
その笑顔は少し寂しそうだった。
「違うじゃん」
そう言って、先に歩き出してしまう。
「ゆずくん!」
呼び止めても振り返らない。
どうしよう……大丈夫かな……。
まさかゆずくんに、そんな関係の人がいるなんて。
私はその背中を見つめることしかできなかった。
この日はずっと、ゆずくんのことばかり考えてしまっていて。
私は朝の出来事が頭から離れない。
〝兄ちゃんじゃなくて、俺を選んでくれた〟って……。
やっぱり兄弟は比べられるのが嫌なのかな。
ゆずくんはゆずくんなのに……な。
あんな風に怒らせるつもりじゃなかったのに。
なんだか昨日までのゆずくんとは少し違って見えた。
「はぁ……」
小さくため息をついた、その時――。
「いっちーーーーー!!!!」
教室のドアが勢いよく開いた。
ひまりだった。
嫌な予感しかしない。