演技派女優に本気で恋をしてしまった社長の誤算
「そうだ。あそこに珈琲ありますよ」

彼女は壁際に用意された珈琲スタンドを指差した。

「一杯どうですか?」

「うん。頂こうか」

そう言うと彼女は俺を連れて、壁際に用意された珈琲スタンドに向かった。

彼女の髪が揺れると、甘い香りがした。

一瞬、彼女を引き寄せたくなる。

珈琲スタンドから珈琲をカップに注ぐと、彼女は何かを探し始めた。

「どうしました?」

「いえ、お砂糖とミルクはないのかなって」

「ああ、俺はブラックなんで、いらないですよ」

彼女は、ニコッと笑うと自分の分の珈琲を注いだ。

「そう言えばあの日も、ブラックでしたね」

彼女は珈琲を一口含んだ。

「あの日?」

「ほら、初めて会った帰り。カフェで会った時」

「……覚えてくれてたんですか」

一瞬、彼女と視線が重なった気がした。

ほんの一瞬なのに、長い間見つめ合っているような感覚に陥る。

慌てて俺は視線を反らした。
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