演技派女優に本気で恋をしてしまった社長の誤算
スタッフに促され、適当に端の席に座る。

スタッフたちはスタッフたちで、まとまって座っているようだ。

その時だった。

「私、こういう場所好き」

そう言って、彼女が俺の隣の席に座った。

「あら、槙田社長」

どうやら隣が俺だということを知らずに座ったらしい。

「撮影、お疲れ様です」

「社長こそ、疲れましたでしょう。ずっと立ってらっしゃって」

「現場で立つのは、慣れてますよ」

俺は御曹司だが、最初から地位のある場所に立つのは嫌だった。

親父に頼んで、社員からやらせてくれと言った。

営業の現場は、思ったよりも大変だった。

「何を飲まれますか?」

「ああ、ウィスキーですかね」

「まあ、カッコいい」

社交辞令だと知っていても、そういう言葉は嬉しい。

俺は悟られないように、少しだけ顔を背けた。

彼女はメニュー表からカクテルを頼んだ。

赤とオレンジのコントラストが綺麗な、カシスオレンジだった。
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